赤ちゃんの暑さ対策、正しくできていますか?-助産師・専門家が伝える「冷やしすぎ」のリスクと上手なケアのポイント
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| 監修:堀内 成子(聖路加国際大学 学長・看護学博士)/永森 久美子(助産師)/野々村 真理子(助産師) |
夏の子育て、暑さ対策に悩んでいませんか?
連日続く猛暑の中、赤ちゃんを連れてのおでかけは本当に大変ですよね。「暑くないかな」「熱中症が心配」「あせもが出てきた」「もっと快適にしてあげたい」、そんなふうに心配しているママは多いはず。
赤ちゃんはまだ「暑い」「寒い」を自分で言葉で伝えることができないため、周囲の大人がこまめに確認してあげることがとても大切です。
最近では、ベビーカー用のクールシートや小型扇風機など、夏の暑さ対策グッズもたくさん登場しています。でも、アイテム選びや使い方によっては、かえって赤ちゃんの負担になってしまうことも。正しく理解して、自分の子に合ったものを選んでいきたいですよね。
今回は3名の専門家に、赤ちゃんの体の特徴と正しい暑さ対策のポイントを伝えていただきました。
赤ちゃんの体温調節は、大人とぜんぜん違う
まず知っておきたいのが、赤ちゃんの体の特徴です。
体温の変動が大きい
「乳幼児の体温調節機能は、未発達です。暑いとき・寒いときに適切に体温を調節することが難しいのです。
① 小さな体格に対して体表面積が大きく、皮下脂肪が薄いため、外気の影響を受けやすいのです。「熱しやすく、冷めやすい」と覚えておくとよいでしょう。つまり、暑い環境では体温が上がりすぎてしまうし、寒い環境では体温が下がりやすくなるということです。
② 汗をかいて体温を下げる機能が未熟なので、熱がこもりやすくなります。」(堀内先生)
「子どもは私たちより体温調整が難しくて変動が大きい。体温が高くなりやすいし、冷えもしやすい。強い風を当てると、大人以上に影響が出やすいんです」(野々村さん)
汗腺の数は大人と同じ。でも体が小さいぶん密度が高い
「赤ちゃんってどうしてこんなにびしょびしょになるんだろう?」と思ったことはありませんか?
実は、汗腺の数は生まれたときにほぼ決まっており、大人も赤ちゃんも変わりません。
でも、体が小さいぶん汗腺が密集しているため、同じだけ汗をかいてもびっしょりに見えやすいんです。赤ちゃんは新陳代謝が活発なので、体温が上がりやすく、その分汗の量も多くなります。
また、乳幼児はまだ発汗機能が未熟なため、暑いときは皮膚の血流量を増やして体の表面から熱を逃がす方法で体温を調節しています。こまめに衣服の枚数を調節しましょう。また、手足から熱を逃がして体温を下げるため、手足が冷たくても脇や背中が温かければ、大丈夫なことが多いです。
皮膚が薄くて、あせもになりやすい
汗をかいたままでいると、皮膚の湿度が高くなります。そのまま皮膚に衣服が密着して、汗が皮膚表面にたまっていると、汗の出口(汗管)が詰まってしまいます。汗が皮膚の外に出られなくなり、皮膚の内部に漏れ出して炎症を起こします。それがあせもです。
また、赤ちゃんの皮膚は大人よりずっと薄く、バリア機能も未熟です。汗には塩分が含まれているため、皮膚の表面に汗が残り続けると刺激になってしまいます。
こまめに汗を拭きとったり、シャワーで洗い流したりすることで予防できます。首のシワやわきの下、腕のくびれなど皮膚が重なるところなどは特に注意が必要です。
暑さ対策グッズの「強い風」で、意図せず冷えてしまうことも
お出かけ中、赤ちゃんはショッピングセンターや電車など、冷房の効いた室内と猛暑の屋外を行き来します。外では35℃を超える暑さでも、室内はキンキンに冷えていることも珍しくありません。
そこで気をつけたいのが、ベビーカーにセットした暑さ対策グッズの「風の強さ」です。
薄着で汗をかいたまま冷えた室内に入ったとき、強い風が当たり続けると赤ちゃんの体は一気に冷えてしまいます。外での暑さ対策が「冷えすぎ」の原因になることがあるのです。
助産師として多くのご家庭を訪問してきた野々村さんは、こんな場面があると話します。「外で汗をたっぷりかいた赤ちゃんが、冷房の効いた室内で手足が素肌のまま、ももまで冷えてしまって心配だなって思うんですよね」。
外での暑さ対策をしたまま、冷房の効いた室内に移ったときに、赤ちゃんは自分で体温調整をすることが難しいので、身体が冷えてしまうことがあります。
そのクールシート、設計思想で差が出る
ベビーカー用のクールシート(赤ちゃんの背中や座面に敷いて体を涼しく保つシート)には、強い風をダイレクトに当てるタイプと、シート全体にやさしく空気を循環させて蒸れを防ぐタイプがあります。
「大人でも強い風を浴び続けると体が冷えてしまうことがありますよね。小型扇風機などでの赤ちゃんへの直接の送風も気になります。直接強い風が当たらないように、風を循環させるような使い方がよいと思います。」(永森さん)
大切なのは「強い風を当てること」ではなく、「背中の蒸れをとってサラサラの状態を保つこと」。汗が肌に残り続けるとあせもの原因になりますが、やさしい風でこまめに蒸れを防ぐことで肌をサラサラに保てます。さらに、風が穏やかなぶん、冷房の効いた室内に入ったときに急激に体が冷えすぎるリスクも抑えられます。
助産師のお二人に、「風をびゅんびゅん送るのではなく、シート全体に風を循環させてサラサラの状態を保つ」というエアラブの設計思想についてお聞きしたところ、こんな反応をいただきました。
「優しい風が、背中を循環するのは、あせも予防につながるかもしれません。」(永森さん)
「エアラブは、首や脇、背中などは風の量が多い設計と聞きました。その箇所を涼しく保つのは効果的。理にかなっていると思います」(野々村さん)
体温変動が大きく皮膚も敏感な赤ちゃんにとって、刺激を最小限に抑えながら蒸れを防ぐアプローチは優しい設計と言えそうです。
グッズを使うときは、赤ちゃんの様子をこまめに確認して
「お母さんたちが赤ちゃんを触って、汗の具合とか冷えてないかとか確認してあげないと。グッズはあくまでサポートです」(野々村さん)
じんわり汗ばんでいるくらいが快適なサイン。冷たくなりすぎていたり、逆にびしょびしょになっているときは、設定を見直してあげましょう。
上手な暑さ対策のための3つのポイント
① こまめに触って状態を確認しよう
赤ちゃんの背中や首元を定期的に触って確認してみてください。じんわり汗ばんでいるくらいは問題ないサイン。冷たくなりすぎていたり、ぐっしょり濡れているとき、逆に体に熱がこもっているように感じたときは、風量を調整したり体を拭いてあげたりしてみましょう。
② 冷やすなら「マイルドに」「効果的な場所に」
脇の下や首元など、太い血管が通っている部位を冷やすと体全体がすっと涼しくなります。エアラブは、風を当てたい効果的な場所に届ける設計になっています。ただ、冷たすぎるもので急激に冷やすのではなく、マイルドにがポイント。ひんやりするくらいのやさしい冷却がちょうどよい加減です。
③ 快適な室温・湿度を意識して
「赤ちゃんにとって快適な室温の目安は、夏場で25〜28℃、湿度50〜60%程度とされています。」(堀内先生)
「教科書的には25度前後で湿度50%前後が目安ですが、ご自身が寒いと感じるほどの温度設定は避けた方がいいですよとお伝えしています」(野々村さん)
数字にとらわれすぎず、自分たちも過ごしやすいくらいの温度感をキープするのがポイントです。
「冷やしすぎない」が、丈夫な体を育てる
もう一つ、専門家の方々から教えていただいた大切な視点があります。
「人の汗腺は、3歳ごろまでに完成します。実際に機能する汗腺の割合(能動汗腺数)は、乳幼児期の熱環境への曝露によって決まると言われています。暑い環境を経験するほど、能動汗腺数が増加します。
一方、快適な室温で育った場合は、発汗刺激が少ないため、能動汗腺数が少なくなる可能性があります。結果として、成人後に発汗能力が低下し、暑熱環境への適応が弱くなることがあります。この時期に決まった能動汗腺数は、成人後も基本的に変わらないと言われています。
つまり、3歳までの温熱環境が能動汗腺数を決定づけると言われています。」(堀内先生)
「適度に汗をかくことは、生まれてからの汗腺の発達に影響があります。お母さんが上着を羽織るほど涼しいお家は、もしかしたら赤ちゃんには寒いかもしれません」(永森さん)
猛暑の中でのおでかけや室内でのケアに暑さ対策グッズを活用することはとても大切です。一方で、自宅ではエアコンを適度に使いながら熱中症を予防しつつ、涼しい時間帯に軽く汗ばむ程度の遊びや散歩などをして外気に慣れること、そのバランスが、赤ちゃんの丈夫な体づくりにつながっていきます。
まとめ
- 赤ちゃんは体温変動が大きく、冷やしすぎにも注意が必要
- 汗腺の密度が高く皮膚も薄いため、あせもになりやすい
- 強い風を直接当て続けることは、体への負担になることも
- 冷やすなら「マイルドに」「効果的な部位に」
- 室内外の温度差に気をつけ、赤ちゃんの様子をこまめに確認して
- 適度に汗をかくことは、体温調整の発達にも大切
暑さ対策グッズは、正しく使えば猛暑の育児をサポートしてくれる頼もしい味方。赤ちゃんの様子を見ながら、上手に活用してあげてくださいね。
監修者プロフィール
堀内 成子 助産師、聖路加国際大学 学長 / 博士(看護学) 専門:オキシトシンの研究、母と子の睡眠、自然分娩の研究、死産の支援など。
野々村 真理子 助産師。病院勤務を経てLiko助産院を運営し、母乳育児支援を中心に、地域で家庭への訪問も実施、新生児から乳幼児期の育児サポートに携わる。
永森 久美子 助産師。大学病院、助産院、診療所、大学教員などを経て、母子の健康支援や産後ケア事業に従事。